迫る失業手当切れ 被災者の実態は…

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被災地の雇用状況が引き続き厳しい状態であろうことは、想像に難くありません。ぼんやりしたまとめに終わっていますが、共産党の記事をピックアップさせて頂きます。

迫る失業手当切れ 被災者の実態は…
社会保険つかぬ求人 家族5人、手取り12万円では…
ハローワーク石巻前

 宮城県石巻市のハローワーク石巻には、雪の日も訪れる求職者が絶えることがありません。駐車場待ちの車が4〜5台並んでいます。懸命に仕事を探す被災者に実態を聞きました。

 「賃金が低すぎる。雇用が増えたといっても、質が下がっている」と男性(53)は訴えました。

 震災前は運送業で働き、手取りで月25万円でした。ところが同じ職種の求人は総支給で月15万円程度。いま受けている失業給付の16万円より低いのです。

 現在は仮設住宅に住んでいますが、「この先、自分で住宅費を払うようになり、税金、保険料などの減免がなくなれば、この賃金ではやっていけない」。ましな賃金の仕事を見ると、長距離トラックなどです。「厳しいものばかりだ」

後を考えると

 親子で同じ水産加工場で働き、一緒に失業した母親(58)と息子(26)は、「社会保険がついていない求人が多い」と言います。「確かに、仕事は選ばなければあるんです。でも後のことを考えれば、選べない」

 失業手当は、長く勤めた母親はまだ給付を残していますが、息子は90日の再延長も含め来年2月で切れます。

 介護の仕事を探している女性(56)=東松島市在住=は、「面接に行くと、ハローワークに出ていた求人票の内容と実際の賃金などが違うことがある。この前は、時給に換算して588円のところもあった」と話します。宮城県の最低賃金は時給675円なので、明らかに違法です。

 魚市場で働いていた男性(28)は、「車も津波で流されて買いなおした。復興まで無職で待っていられない」と、コンビニのアルバイトをしました。ところが時給700円で月11万円にしかならず、2カ月で辞めました。範囲を仙台まで広げて仕事を探していますが、不採用が続いています。

 「家族は母、妻、子ども2人の5人。車も借金して買いなおした。最低月20万円はほしい」と話す男性(41)は、「応募できそうな求人は、12万〜13万円くらい」。失業手当も3月で切れます。

 がれき処理など復興事業関係の賃金と労働条件は劣悪です。がれき処理で重機に乗っていた男性(42)は、2カ月で辞めました。「日当1万円だったが、機材が壊れたときの弁償を労働者に押し付ける会社で、とても続けられない。日当が7000円というところもある。安すぎる」と憤りました。

 震災前、漁師をしていた男性(32)は、「いまは家屋解体の仕事をしているけど、賃金が安くて、妻と2人で生活できない」と別の仕事を探しにきました。

この年齢では

 がれき処理の仕事は無理だという女性も。働いていた水産加工場が流された女性(50)は、「水産加工の求人はまだ少ない。この年齢で別の仕事はつとまらない」と話します。

 販売業を解雇された女性(44)は、給付つき職業訓練でパソコンの資格を取ったものの「資格が仕事探しに役立たない」と言います。求人が土木や有期雇用にかたよっているといい、「母子家庭で子どもを育てている。安定した仕事につきたい」と語りました。

 高倍率の職業訓練に当選しヘルパー2級を取得した女性(42)は、時間がかかりましたが「子どもがいるので、夜勤のない仕事」という条件に適した仕事を見つけました。「失業手当切れが迫っていたので、何とか見つかってほっとした。職業訓練はありがたいけど、そもそも応募できる雇用が少ないのが大変です」

厚労相「手当延長で就労意欲薄れる」
発言に怒りの声 「仕事ないのに」

 失業手当の給付切れが迫っている被災者は、懸命に仕事を探しています。手当は特例延長(最長210日間)していますが、早い人で来年1月にも給付が切れます。

 小宮山洋子厚生労働相は11月22日の記者会見で、延長をしない方針を示し、「失業手当でやることによって就労意欲が薄れるのではないかという話もある」と発言しました。ハローワーク前の聞き取りでは、この発言に怒りの声が出ました。

 自宅を津波で失った男性(61)は、「給付を受けて働く意欲がなくなるんじゃない。そもそも仕事がない。もっと被災者の実態をつかんで、雇用を確保してほしい」と訴えました。女性(56)は、「津波で家が浸水し、床が抜けた状態で暮らしている。失業手当が切れた先のことを考えると、精神的にふさぎ込んでしまう」と言いました。

 運転していたトラックが流され、失業した男性(28)は言います。「失業手当は来年3月で切れる。怠けたくて仕事をしていないのではない。まじめに働いていたのに震災で仕事を失ったんだ。ここにきている人はみんなそうだ」

ハローワークの体制拡充が必要

 失業手当の給付が来年1月から切れ始めるにあたって、被災者の希望をふまえ、ハローワークによるきめ細かい就職支援が求められています。

 ハローワークではこの間、定数削減が続き、4〜5月の被災者が雇用保険の申請でハローワークに殺到したときは、全国から応援が入り、対応しました。被災者一人ひとりの希望にそった就職支援をするには、正規職員の増員による体制拡充が不可欠です。

 京都で開催されたILO(国際労働機関)アジア太平洋地域会議(4〜7日)の特別セッションでは、日本政府が自然災害に対応するための雇用政策について文書をとりまとめました。「自然災害に対応する雇用政策は…ディーセント・ワーク(人間らしい働き方)の実現に資するよう実施されるべきである」「公共職業安定組織による求人開拓・職業紹介サービス…が提供されるべきである」としています。

 政府・厚生労働省が自ら作成した文書の精神で、復興にむけた雇用政策を実施するためにも、体制の充実を求める要望がハローワーク職員のあいだで共通していました。




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